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さぁ、【二郎はなぜうまいか?】シリーズもいよいよ折り返し地点に来ました!
前々回の記事「【二郎はなぜうまいのか?】第一部 ~麺~」にて、二郎の麺の"力強さ"を説明し
二郎のスープは[極大の旨味×極大の脂肪分/乳化=中毒性]という方程式で説明できるという、ラーメン界と、数学界を騒然とさせる、スキャンダラスな発表を行なった。

そして、今回は二郎の具についてCooking Maniac流に「科学的な視点」を含めて考察してみよう。


「ラーメンはスープが命!」というのが定説だったのが約20年前、
「スープだけではなく麺も同じく大事なのだ!」と、つけ麺ブームによって価値観の変化が起きたのが約10年前。
さて、現代は?

【具】の重要性が増してきている!!
なぜかというと、SNSや、Twitterなど、個人が食べ物の写真を撮ってインターネット上にアップロードすることがいとも容易くなった現代において、「写真の見栄え」というのはかなり重要!
そして、【具】はラーメンの顔。

そんな時代が訪れることをまるで予言していたかのように、創業1968年の二郎は、超暴力的なまでに食欲にボディブローをかます見栄えのラーメンを作った。
そして、その二郎の見栄えを支えているのが、山盛りに盛られた野菜と、極厚豚肉だろう。
そして、それらの具は見栄えを良くすることなんて全く関心がないようなほど、[うまい!]のだ。
さらには、野菜は無料だし、アブラや、ニンニクも無料でトッピングできることも大きな特徴だ。
 
「ヤサイマシマシアブラカラメニンニクマシマシ」

こう詠唱する男の顔には一種の誇らしさすら感じられる。
そして、その気前が良過ぎる盛々したラーメンを、幸福な野生動物のように夢中で喰らう。
そして、それがたまらなくうまい!!!

では、なぜその具がうまいのか?

[ヤサイ][ブタ][アブラ][ニンニク]
の4つの項目に分けて説明していこう。

[ヤサイ]
二郎を語る上で欠かせない具がヤサイでしょう。
これは、もやしにキャベツを10%前後の割合で混ぜたものが、熱湯で15秒程湯通しされたものである。
これを、一気にザルにあけて、オーダーごとに盛り付けていく。

実はこの仕組み、調理の点から見て素晴らしい。

というのは、二郎ではもやし&キャベツを計2kg~4kg程の量で、一気に熱湯が沸く寸胴の中に入れる。
この強火力で沸く熱湯に15秒くぐらせた野菜は、表面は火が通っているが、中心部はまだ生だ。
しかし、それをザルにあけて置いておくことで余熱でじんわり中まで火が通り、「シャキシャキだけど、生っぽくない」という理想の茹で加減になる。しかも、余計な水気が流れるので水っぽさも防げる。

そして、二郎のこのヤサイがおいしいポイントは3つある
 
①二郎のスープの油っこさの中和
 前回、スープの記事で、「二郎のカロリーの60%が脂肪分である」と説明したが、その油っぽさを中和してくれるのが野菜の、清涼感、歯ごたえ、水分なのだ。
まぁ、これは二郎を食べたことのある誰もが直感的に感じているところだろう。

②スープの油脂分による野菜のエグミのマスキング作用
 野菜というのは、本来エグミ・青臭さがあり、それは生に近ければ近いほどより強く感じられる。
 二郎の野菜は、シャキシャキしていて、生と、完全に火が通っているの中間位で、単体だけで食べるとやはりややエグミがあり、青臭さを感じ、単体ではたくさんは食べられないはずだ。
そこで、油脂分には、野菜のエグミや、青臭さを感じる成分を包みこみ味覚として感じなくさせる「マスキング」という作用がある。
それによって、あのたんまり盛られた野菜もおいしく食べられるようになっているのだ。
 
③食感の上での一体感
茹でたシャキシャキの野菜の食感は、二郎の超極太麺に負けないほどのしっかりした歯ごたえがある。
しかも茹でられたことによってしなやかさが生まれ、麺をすすろうとしたときに、もやし&キャベツがしなやかに麺にくっついて、一緒に口に運ばれる。そして、麺とヤサイは、同じ位のしっかりした歯ごたえがありながらも微妙に違う。
その微妙な変化が楽しめるものの、結果一体感のある食感というのが高い満足度と、おいしさにつながっている。

あとは、「これだけ脂っこいもの食べているけど、野菜もたくさん食べているから大丈Vッ!!」
っていう、心の免罪符的な役割も果たしているものと思われる。 

「ブタ」
二郎のブタの作り方は、90分豚の腕肉をスープの中で煮込み、醤油だれに90分漬け込む。※各店舗によって微妙な差はある

この作り方も、調理科学の視点から見ると素晴らしい。

[肉の火入れと、たんぱく質の変性温度]が関係しているのだが、あまりに詳しいことを書くと、それだけで余裕で一記事できてしまうので、簡略的に書く。

肉というのは、[60℃~80℃の間の温度帯をなるべく長く通過させること]がおいしく調理していくコツである。
というのは、肉のたんぱく質というのは一気に高温にしてしまうと、細胞が一気にギュッと固まってしまい、細胞が破裂し、旨味成分を外に排出してしまう上、肉の繊維が硬くなってしまうのである。
焼きすぎたステーキとかをイメージしてもらうと分かりやすいだろう。
そして、ゆっくり火を通すことで、肉の繊維が破裂せず火が通り、肉の繊維と繊維をつなぐ硬いコラーゲンがゆっくりゼラチン化し、結果やわらかい肉の煮込みが出来上がる。
大量に煮込む煮物がおいしい秘訣はこの原理である。

二郎では、豚腕肉を一気に8本前後(1本800g前後)仕込む。
一気豚肉をメインスープの寸胴の中に仕込むことによって、スープの温度は下がる。
そして、すごく大きなポイントとして、

【二郎のスープというのは、単なる水分でなくて乳化したスープである】

ことが、超大きな影響を及ぼしている。
そう、二郎のスープは【旨味の溶けた水分と、油脂が、ゼラチンによって乳化させられた状態】

そして、乳化した液体というのは、[その液体の中にたくさんの空気を含んでいる]

そして、空気を含んでいるということは、熱の通し方が緩やかになるということなのだ。
ダウンジャケットは、なかに空気をたくさん含んでいるから、空気が温度の防護壁となって冷気を防いでくれているのと同じだ。

つまりだ、二郎の乳化した、たくさんの空気を含んだフワフワスープの中で煮込まれる豚肉は、スープの熱が緩やか~に伝わる。
これにより、最初に説明した、[60℃~80℃の間の温度帯をなるべく長く通過させること]の状態を作り出す。
そして、スープで茹で上げた豚肉を醤油ダレの入った寸胴に入れて漬け込むのだが、熱っされたアッツアツの豚肉が8本(800g×8本=6.4kg)、醤油寸胴の中に入ったらどうなるか?
醤油の寸胴の温度が80℃近くまで上がるだろう。
そして、冷めていく過程で、またしても[60℃~80℃の間の温度帯をなるべく長く通過させること]の状態になるわけだ。
そして、調味液というのは、肉が冷めていく過程で肉に染みこんでいく性質があるため、【火が通っているけれど、やわらかく、味がじっくり染みている】状態の豚肉が出来上がるのだ。

うーーーん、本当に実に良くできている。
微妙に近年主流となっている肉の火入れ法の「低温調理」に近い作り方なんだよなぁ。
恐るべし。

[アブラ]
二郎では、とにかく大量に豚の背脂をスープ寸胴に入れて煮込む。その煮込まれた背脂を包丁で細かく切ってさらに煮込む!!
そして、フルフルになった背脂はトッピングとして、ラーメンの上に豪快に乗せられる。
これがまたうまいんだが。煮込まれた豚の脂身が食べられる料理って他になんだろう?
そう、豚の角煮。
豚の角煮は、あのトロリととろける脂身がおいしさの要因の一つだが、二郎では、そのトロける脂身が無料トッピングで食べられるのだ。
そのコストパフォーマンスと、あの背脂に醤油(カラメ)がかかっった褐色の色味はビジュアル的に素晴らしい!!

[ニンニク]
「ニンニク入れますか?」
これが二郎の代名詞ともなっているほどに有名なキャッチフレーズだろう。
そして、ニンニクを入れた二郎のラーメンは鬼に金棒といわんかな、最高の相性だ。

では、なぜニンニクが二郎に合うのか?
科学的に解説しよう。
ニンニクというのは、「アリイン」という物質が0.1%含まれている。
これは、ねぎとか玉葱にも含まれている物質である。
しかし、ニンニクが特別なのは、ニンニクだけ「アリナーゼ」という酵素も含んでいることだ。
ニンニクを刻んだりして、細胞を破壊することでアリインとアリナーゼが出会い、アリナーゼの酵素パワーによって、「アリシン」という物質ができる。
そして、アリシンは、ビタミンB1と出会うと「アリチアミン」という化合物が生成される。
ここがミソ!!
二郎のスープは豚が主体、と説明しましたが、ビタミンB1は豚にたくさん含まれるのです。

つまり二郎というのは、ニンニク(アリシン)と、ブタ(ビタミンB1)が出会い、ガンガン「アリチアミン」を生成しているわけですよ。
そして、「アリチアミン」というのは、【疲労の蓄積を防ぐ】という効果が!!
つまり、二郎は天然のサプリメントなんですよ!!
そんな体に良い成分まで含んでいるから、人間は潜在意識的に「ニンニク入りの二郎」をうまい!と感じてしまうのでしょう。

しかも、二郎は決して「すりおろしニンニク」は使わないんです。
あれは、安いし、手間もかからなくてとてもいいんですが、使わない。
なぜか?
それは、ニンニクに含まれるアリシンというのは繊細な物質で、すりおろしたものを長時間置いておくと成分が壊れてしまって、徐々にアリシンが減っていくんですよ。
そういうことを知ってか知らずが、すりおろしは絶対使わない。
本当に素晴らしいし、かっこいい。

[総括]
さて、今回も色々説明しましたが、本当によくできたラーメンだなぁ、って再認識しました。
ラーメンの具のステレオタイプとして、ネギ・チャーシュー・味玉・メンマとなっている中で、ほぼヤサイとブタ!っていう豪快かつ、一見、単純そうに見えて、その一つ一つが実は凄く作りこまれているクオリティ。

ヤサイの茹で加減と、スープとの相性
ブタの火入れの巧みさ
アブラのコストパフォーマンス&ビジュアル性
ニンニクの効能と適切な活用

これだけ本質を突いているからこそ、あのビジュアルは人の心を動かすのかもしれない・・・

・・・・・ヤベッ、なんかしんみりしてきちゃったな、ちょっと泣きそうだわ!!

てことで、明日はいよいよ総括編!!!
感動のラストスパートですよ!!!
絶対見てくれよなッッ!!


あと・・・・
も書きました!
是非♪  

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